10月29日(月)~11月6日(火)
7泊8日でナノハウスに滞在させてもらうことになりました。 ぼくらは劇団唐ゼミ☆という劇団をやっています。本拠地は横浜、主な発表の場は東京の浅草ですが、去年(2011年)から縁あって、長野市権堂の街でも公演できることになりました。初回が好評だったので、ぼくらを呼んでくれたネオンホールの小川支配人やその仲間の人たちとますます意気投合して、毎年恒例にしようということになりました。ですから、今回は2度目の長野公演です。これから18名の劇団員とともにナノハウスで合宿しながら、11月3日(土)4日(日)の舞台発表を経て、6日(火)に横浜に帰る日までを過ごします。
10月29日(月)
早朝に横浜を出発して、お昼に長野に到着。 まずは公演場所である権堂のイトーヨーカドー駐輪場に資材一式を搬入する。テントを使った野外劇(サーカステントの小型と想像してください)がぼくらのスタイルなので、荷物は多い。4トントラック2台分だ。 まずは長野の寒さの先例を受ける。横浜からだと、冬の中に飛び込んだような感じだ。自分は作業の休憩時間にヒートテックインナーを買いに走ったが、地元の人に言わせると今日はまだ温かい方であるとのこと。大丈夫か、唐ゼミ☆長野公演。 それから宿舎であるナノハウスに移動、メンバーの鞄、大人数で自炊するための調理器具などを搬入した。周囲が民家なので、静かに、静かに。部屋割りをして、それぞれが手にした自分のスペースでほっと一息。大人数だし、石油ストーブがあるので、ナノハウスの中は温かい。
10月30日(火)
一晩寝て、二つ問題が出てきた。一つは、夜中に誰かがトイレに立つと、一階で寝ている人が確実に目を覚ましてしまうこと。それから、こちら二つ目の方が大問題だが、お風呂の順番を待っていると、夜中になってしまうこと。前者は、より鈍感なメンバーを一階に再配置することで解決。後者は、ちょっとお金はかかるけれど、今日から銭湯も使おうということになった。ちょうどイトーヨーカドーとナノハウスの間には、亀の湯がある。メンバーの何人かは亀の湯に立ち寄ってから帰って来ようということになった。 朝食を終えると、ナノハウスの表にある美容院の方にご挨拶しながら現場に向かう。まず、善光寺の参道を目指し、そこで右に折れる。宿坊を左右に見ながら、表参道を長野駅方面へ。ゆるやかな坂を下るうち、ごんどう商店街のアーケードが見えたところで、左に折れる。相変わらず味のある相生座を経て、秋葉神社の表にある巨大な獅子舞の顔が見えたら、公演場所はすぐそこ。 現場まで通うこの道がなによりの贅沢。初めて連れてきたメンバーはとりわけ嬉しそうだ。一日の作業が終わってこの道を帰ると、今度は街が夜の顔になる。これはこれで味わい深い。
11月1日(水)
ナノハウスは快適。ここまでの2泊でちょっとしたストレスも解消し、すっかり住めば都になった。最低年齢18歳、最高33歳の劇団員はわりと順応性が高いメンバーが多いが、みんなこの一軒家を気に入っている。 現場での公演準備も順調。ただ、寒い。長野のお客さんは地元の寒さに慣れているだろうけれど、上演は休憩を2回入れて3時間近い。大丈夫か? テント劇場から見える道路の中央分離帯には、温度計と湿度計が表示されるポールがある。開演時間の16時に、今日は16℃だった。終演の19時頃になるとこれが10℃近くまで下がる。心配だ。 亀の湯に寄って宿舎に帰ると、夕食。食事当番も2日間で、大人数用の味付けに慣れたようだ。2〜3人分つくるのと約20人分では、勝手が違うらしい。曰く、ガバッと調味料を入れる勇気が必要。
11月2日(木)
今日は最終リハーサルの日。今回の演目は『吸血姫(きゅうけつき)』というが、この長野公演が初めての上演場所となる。先年は東京公演を終えてから長野公演だったけれど、今年は順番が逆になった。というわけで、明日が唐ゼミ☆『吸血姫』の世界初演なのだ。 ところで、ここ数日気になっていたのだけれど、夕方になると街の中を飛び交うこの鳥の多さはなんだ!? あまりに多くて、買い物を終えた人たちも、空を見上げている。大半がムクドリ、中にはコウモリもいるらしい。鳴き声もすごいが、なによりすごいのはフンの量。車を停めておくと、ベトベトにされてしまう。今回の舞台には人力車が登場するが、これは浅草の知り合いを頼って借りた本物だ。メンバーは鳥のフンから大切な人力車を守るのに必死。他にも、あまりにうるさい鳴き声で、科白がかき消されてしまった出演者もいた。 リハーサルを終えて最後の微調整をしたら、さあ明日が本番初日だ。
11月3日(土)
初日だ。今日も晴れている。ちなみに長野に来た月曜からここまで、雨は降っていない。ここまで作業と稽古、リハーサルの連続だったので、今日の朝はちょっとゆっくりにした。どんなに準備しても、本番でコンディションが整わなければ意味が無い。遅めの朝食をとって、現場に向けて出発だ。 この頃になると、みんなちょっとずつ自分のペースで動くようになる。ナノハウスを出るタイミングが早い人、遅い人。徒歩20分くらいの道を、なるべく違うコースで歩く者もいる。そうやって少しでも長野の街並を楽しみたい者がいる一方で、朝は必ずコンビニに寄って、その日発売の週刊誌をチェックする者もいる。本番前だって、なるべくカロリーのあるものを食べようとする者、軽いものしか口にしない者、それぞれだ。本番に向けて自分を整えるために、それぞれが儀式というか、ルーティンを持っている。自分は、初日が上手くいくことを祈願して秋葉神社でお参りする。 さあ、本番、本番。寒い本番。鳥の群れの中での本番。なにより、一年ぶりに長野で待っていてくれたお客さんたちと再会する本番。 もう開演前の挨拶から盛り上がって、嬉しかった。うちの劇団では。公演の準備を初日2ヶ月前を目安に始めることにしている、そしてその期間の大半が、地味な作業に費やされる。時々は、すごいアイディアの閃きがあったり、それに応じてグンと劇が良くなったり、そういう輝かしい瞬間もあるけれど、台本に向き合い、お互いに向き合う時間の多くは、こつこつとしたものだ。こういう地道な時間を、自分は大いに好きで劇をやっているのだけれど、やはり本番はなにものにも代えがたい。その日、その場所に集まったお客さんとコミュニケーションできるかどうかは、その時にならないとわからない賭けみたいなものだ。このギャンブル性がおもしろいのだ。 それにしても、劇団のエース俳優の一人、西村の登場シーンで今日も鳥たちがギャーギャー鳴き始めた時は笑ってしまった。こういうとき、小さな声で渋く演じたくとも、現場に応じて大声張り上げるのがテント演劇の俳優だ。きっと明日もこうなるだろうから、彼が弱音(小さい声で表現すること)を使うのは、東京に持ち越されそうだ。
11月4日(日)
本番二日目。 今日の朝もゆっくりにした。やはり出演者にとって、リハーサルの疲れと本番の疲れは桁違いのようだ。同じ所作や科白、同じ時間の舞台でも、多くの人の前でそれをやるときには、それだけのエネルギーを発散させなくてはならない。それは、彼らの充実感の証でもある。自分はといえば、演出なので出演はしない。舞台に出るのは最初と最後の挨拶だけだ。ほとんど勢いでやるだけなので、楽しいばかりで全然疲れない。 今日もそれぞれに本番前の準備をして、また鳥たちが集まってきて、16時の開演が近づく。けれども、今日のお客さんは昨日のお客さんとは違うので、本番もまた違うものになる。 正直言って、自分たちはまだ売れっ子劇団ではない。だから時間がある。いつもその時間をひたすら稽古や公演準備に費やして過ごしている。そして、そうやって際限なく準備を積み上げるのは、本番になってそれらを投げ捨て、忘れてしまうためなのだ。本番では、なにより目の前にいるお客さんのこと、刻々と変化していく相手役のことを考えるのがいい。だから、自分がなにをしなければならないか、なんて考えていてはダメなのだ。本番は出たとこ勝負の場あたり的がいい。適当にやるために、一生懸命やっている。 終演して、何人かのお客さんと喋って、亀の湯に行ってナノハウスに帰る。 居間でゴロゴロしながら劇団員と話したあと、翌日も片付けがあるのでさっさと寝てしまう。
11月5日(月)
本番後の片付けの朝はとりわけ早い。本番を終えて疲れてはいるけれど、さっさと片付けてなるべく夕方からの自由時間を多くとりたいからだ。去年は善光寺に行く時間がなかった。せっかくナノハウスから歩いて5分なのだ。噂に聞く「お戒壇めぐり」をやってみたい。 皆で心をひとつにして働き、目的を達成した。15時くらいから、お戒壇も、ちょっとした買い物も、おそばの食べ納めも済ませた。夜にはネオンホールで、翌週末から本番が行われる寺山修司作の劇『邪宗門』のリハーサルを観て、皆でおもしろがる。観終わったあとも、わいわい喋りながら参道を歩いて帰った。ナノハウスでの大家族気分も、今日で最後だ。盛り上がっては「しーっ」の繰り返し。ご近所に迷惑をかけてはいけないのだ。
11月6日(火)
出発の日。トラックへの積み込みを終え、周囲へのあいさつ周りを済ませたところで、最後にナノハウスの荷物を回収して、長野を経つ。帰りに周囲の山々を見渡すと、上の方からすっかり白く染まっている。あそこでは雪が降っているのだ。長野の風が冷たいわけだ。巨大な氷柱に囲まれているようなもの。ハウスの中は温かだったけど、外は寒かった。来年は、もっと暖かい時期に来たい。この日になって、初めて雨が降った。が、それも群馬を超えて都内に入るとやんでしまうような小雨で済んだ。
※唐ゼミさんの宿帳
【劇団唐ゼミ☆プロフィール】(※公式HPより)
横浜国立大学教授だった唐十郎のゼミナールをもとに発足した劇団。 主に青テントで唐十郎作品を上演。 代表・中野敦之。
05年、新国立劇場のプロデュースにより『盲導犬』『黒いチューリップ』を上演。その後、新東京タワー予定地(現スカイツリー建設地)、池袋西口公園、関東以外では大阪、京都、山形、北陸、さらに06年には韓国でも公演。09年10月浅草にて、蜷川幸雄演出のパルコ劇場での上演以来、再演不可能とされてきたオカマ100人芝居『下谷万年町物語』を上演し、新聞などでとりあげられた。以降、浅草を中心に公演を行なっている。11年11月には横浜にて唐十郎リサイタル、展示など四部門構成からなる、『大唐十郎展』を開催。
※11年『海の牙 ―黒髪海峡篇』、12年『吸血姫』に続き、13年は『夜叉綺想』が6月29日(土)、30日(日)にイトーヨーカドー長野店前、ごんどう広場特設テント劇場で公演予定です。
乞うご期待!!
東京から、ネオンホールへライブをしに行き、体験ハウス体験させていただきました。
いただきましたと言いましても、実はライブの打ち上げでメンバー全員酔っぱらってしまいまして、 酩酊の内に門を叩き、次の朝ふらふらと出発したので、 本当に体験ハウス体験したのかと言われると正直自信がありませんでして。
修学旅行のような気分で皆で、きゃっきゃしたのは憶えております。 次回体験するあかつきには、リベンジで、人の二倍、体験し倒そうと思っております!
moools 酒井 泰明
【Moools(モールス)プロフィール】(※公式HPより)
1997年、酒井、内野に有泉が加わり、活動開始。以降、下北沢、渋谷周辺の都内ライブハウスを中心に精力的なライブ活動を展開。 国内外、メジャー/インディ、ジャンルを問わず幅広いラインナップとの共演を果たす。 USインディ・シーンとの交流も深く、1999、2001年には、USインディの祭典ヨーヨー・ア・ゴー・ゴーに出演。 2007年秋に東海岸は+/-、西海岸はMount Eerieと敢行(14都市17公演)。 2010年7月にはWolf Parade(SUB POP)の前座として北米16都市17公演をツアー。 現在までに、5枚のフル・アルバム、4枚のミニ・アルバムを発表。最新作は、2010年3月リリースの5thアルバム『Weather Sketch Modified』。 アルバム制作を機に、ソロ・アーティストとしても活動する浜本亮が加入。 mooolsの他、酒井はサイン会としてソロ、内野はtoddle、酒井&有泉はインストゥルメンタル・グループ、Kabaddi Kabaddi Kabaddi Kabaddiのメンバーとしても活動しており、有泉は2002年よりレーベル7e.p.(セヴン・イー・ピー)を共同主宰している。 2002年より自主企画「モールスまつり」(通算30回)を立ち上げ、国内外の様々なアーティストをゲストに迎えている。 結成15周年となる今年は、「第31回 モールスまつり」を11月より、国内ツアーとして敢行!
1999年 長野県喬木村にて、佐々木、下岡の2人でひっそりと結成。 2000年 暮れに佐々木、下岡が長野県喬木村より下山、上京。 2001年 都内でライブを開始。(w/サポートドラム) 2004年『世界は幻』、『日曜日の夜みたいだ』を完全コンパイル+リマスタリングしたリイシューアルバム『アナログフィッシュ』をエピックレコードよりリリース。 東京を中心に活動中。
今回長野に来たのは権堂ネオンホールの20周年記念公演「邪宗門」にゲスト出演する為でした。
長野を離れて東京に住みだして10年ちょっと経ちましたが、またこうやって長野に来られるというのは幸せなことです。
しかも今回は長野まちなか居住体験ハウスに泊まることができてラッキーでした。
母校の信大教育学部も近く、なじみのあるエリアの一軒家。
今回は2泊目に妻と1歳の娘も一緒に泊まったので、もしも家族で長野に移住してくるとしたらこんな感じなのかなという疑似体験も出来ました。
蒲池 岳
【カマチガクプロフィール】
信州大学在学中の94年に前身となるバンドを長野で結成。98年夏頃よりゴーグルエースとして本格的に活動をスタート。99年にマキシシングル「GOLDEN ALLIGATOR」(Knockers Records / Sony Records)でデビュー。
これまでにアルバム5枚、シングル3枚をリリースのほか、国内外の多数のコンピ盤に参加している。
GSやエレキ等の和製60sビートをルーツにしたガレージサウンドを得意とし、ニヤリをキーワードにショウアップされたライヴが各方面で話題に。
2003年には全国47都道府県でのライヴを達成し、その後もアメリカやヨーロッパ各国(ドイツ・イタリア・スイス・チェコ・オーストリア等)へ数回ツアーするなど、活動範囲は面積的にもかなり広い。
閉鎖前のニューヨークCBGB's(2003年)や、ヨーロッパ有数の60sフェスであるイタリアのFestival Beat(2004年)等にも出演。
2008年にはメキシコツアーを行い、麻薬カルテルのテロリストからの脅迫を受けつつも(実話)、無事ツアーを成功させる。
その他、映画「ROCKERS」(監督:陣内孝則)をはじめ、音楽系映画や舞台にも度々出演。
映画サントラ~ラジオジングル~BGM制作等の各種スタジオワーク/プロデュース業務(というか裏方)も精力的にこなす。
カマチガクが主宰するSazanami Labelは2008年には5周年を迎え、60s-70sルーツの良質な一癖あるバンドをリリースし続ける独立レーベルとして注目を集めている。
2010年4月より新メンバーを向かえ、本格的に活動再開!
※邪宗門集合写真。前列スパンコールのジャケットがカマチさん。(写真提供:ネオンホール)