1166バックパッカーズの隣にとても瀟洒な建物があります。
門前住人も、1166のゲストも、たびたびカメラに収めるその趣ある建物は、
かつて「森山砲銃火薬店」という猟銃などを扱うお店でした。

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ご主人は十数年前に亡くなり、ご商売はやめてしまいました。
その奥さん、87歳になる森山スズさんにお話をお聞きする機会に恵まれました。

スズさんのご実家は、JALシティホテルの裏にあるお寺、栽松院。
学生時代はまったく勉強をせず、志賀高原でスキーばかりしていたそうで、
「スキーが縁で主人と結婚したようなものね」とニコリ。

ご主人は店の軒先に腰掛けては、道行く人に声をかける気さくな人だった、と
スズさんは楽しそうに振り返ります。

建物は亡くなられたご主人のお父さんが建てられたとのこと。
正確な築年数は分からないものの、
スズさんがお嫁に来たときには既にあったそうなので、少なくとも戦前。

天井はドイツ製の陶板で出来ており、
当時は、長野では森山邸とホテル犀北館、そして蔵春閣の3棟にしかなかったそうです。
今では森山邸のみ。
どう手入れされているのか、未だに真っ白です。

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扉もドイツ製の姿見の、鏡の部分をガラスに張り替えたものだそうで、
押してみるとずっしりと重みがありました。
「ガラスも舶来物なのよ」とスズさん。
「ホントに素敵なお宅ですね」とお世辞抜きに賞賛すると、
スズさんは「それはそれは、おじいさんも天国で喜んでるでしょうね」とにっこり。

1166ができたおかげで
「この前の道も最近めっきり減った人通りが、また戻ってきたわ」と目を細め、
「ホント、明るくていい子が来てくだすったわ」と
1166のオーナー・織絵ちゃんのことを嬉しそうに褒めていました。

娘の多笑を見ると「ホントにかわいいねぇ」とほお擦り。

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(多笑は突然のことに固まってしまいましたが)

帰り際、「またいつでもお茶のみにおいで」といつまでも手を振ってくださいました。
門前にまた立ち寄りどころができました。

(夫記)

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