長野・門前暮らしのすすめ

門前暮らし日記

さよなら、トラ

このブログにはつらいことや哀しいことは書かないようにしています。
出来るだけ、門前に関係ないことも書かないようにしています。
「門前暮らしのすすめ」ですから。

しかし、今日は特別、ある猫のことを書こうと思います。
名前をトラ吉と言います。
僕が初めて心を通わせた、人間以外の動物です。
妻の実家の飼い猫です。

そのトラ吉が昨日、死にました。

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僕は妻からのメールでその一報を受け、
仕事が手につかず、ドラマのワンシーンのように、
人目につかない駐車場の車へ駆け込み、ワンワン泣きました。

本当に気のいい猫でした。
初めて会った時から、膝に乗ってきました。
誰にでもという訳ではないようです。
自分を可愛がってくれた妻の大切な人だということが分かっていたのでしょうか。

妻の実家に行くたび、媚びるでもなく、猫なで声をあげることもなく、
ただ悠然と、泰然と、「おー、高志君、来たか」とでも言わんばかりの
余裕を持って寄ってきました。
そして膝に乗って、ただグルグルと喉を鳴らしていました。

僕はトラが大好きでした。

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うちの子供たちにも寛容でした。
しっぽをギュッとつかまれても、バシバシ叩かれても、
鷹揚に多笑と直太朗と触れ合ってくれました。

義母によると、男気あふれる猫だったそうです。
弱いものいじめはせず、強い猫には敢然と立ち向かう。
だから生傷が絶えませんでした。
しかし、だからこそモテました。
トラ吉を慕う猫って、何匹いたんだろうというくらい。

僕は猫が好きなのですが、飼ったことはありません。
猫に限らず、ペットを飼ったことがありません。
だから、今回のことは本当にショックでした。
「生き物を飼うのは嫌。だって死んだ時、哀しいから」
そういう人の気持ちがよく分かりました。

僕は妻に伝えました。
「僕は猫を飼えない。こんなにつらい思いをするのは嫌だ」
妻はそれには応えず、こう返してきました。
「あんないい猫とひとときでも暮らせたのは幸せだね。たくさんお礼を言いたい」

妻の実家は犬や猫をこれまでたくさん飼ってきました。
だから別れの覚悟は、飼う時点でできているのかもしれません。

ペットを飼う楽しさと、失う辛さ、どちらが大きいのか、僕にはまだ分かりません。
でも、今は妻を見習おうと思います。

ありがとう、トラ。
たくさんの素敵な思い出をありがとう。

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(夫記)