往生寺は、善光寺の北西の山の中腹にある名刹です。
善光寺表参道にある西光寺とともに、約800年前の昔、九州博多からやってきた刈萱上人(苅萱上人)と石堂丸(石童丸)ゆかりの寺として知られています。かつて善光寺参りの旅人の多くは善光寺の後、往生寺にあわせて参拝するのがならわしでした。その親子の物語は、今も「絵解き」で聞くことができます。
その往生寺のある場所の現在の町名(地区名)は、往生地です。ともに読み方は「おうじょうじ」なのですが、町名は「地」になっています。往生寺は、刈萱上人の往生した地なので、往生地だと考えられています。
ところで、往生寺周辺には、古い小字(こあざ)がいくつもあります。
往生地
往生地前
往生地西
北往生寺平
南往生寺平
往生地は、大字西長野と大字長野にまたがっています。つまり、江戸時代からすでに腰村と長野村にまたがっていたのです。大字西長野の範囲には、往生地、往生地前、往生地西という地名があるのに対し、大字長野の範囲には、北往生寺平、往生寺平という地名があります。
地名はすべて「地」かと思いきや、往生寺平という地名ではなぜか「寺」が使われています。地名の場合は「地」ですとは、単純に言えないのです。
ともかく、往生地、往生地前、往生地西、北往生寺平、南往生寺平と、5つも往生のつく地名のあるところに、往生寺という寺の善光寺周辺での歴史的な役割の大きさが感じられます。
門前暮らしをしているのに、往生寺へ行ったことのない方はいらっしゃいませんか? ぜひ、往生寺へ行って、眼下に広がる門前町を眺めてみましょう。