松葉屋家具店で行われているギャッベ展に行ってきました。
「今うちの家計に余裕はないぞ」と自分に言い聞かせつつも、
直に見て触れると、やっぱり魅せられてしまいます。
わが家にも、ギャッベが一枚あります。
大人ひとりが大の字に寝転べる程度の小さなものです。
買ったのは3年前。
当時、私は出版社に勤め、編集の仕事に携わっていました。
松葉屋さんで初めて開催するギャッベ展のお知らせを
「日和」に掲載するための写真をお借りしつつ、
その頃まだ耳慣れなかった「ギャッベ」についてうかがいました。
なかでも印象に残った佳子さん(松葉屋の奥さん)の話。
「欲しい家具や道具をそれなりに手に入れてきて、
もう満足したかなあと思っていた時に、ギャッベに出会ってしまったの。
今は、あったかい暖炉の前にギャッベを敷いて、
寝転んだり本を読んだり、そんなことができる小屋でもあれば十分」
でも、それって究極の贅沢かも、と笑い合いながら、
その情景は私の心に焼きつきました。
仕事に追われ、平日と休日の境も、時には昼夜の区別すら曖昧。
実家暮らしの自室へは寝に帰るだけ、という私の日常からは
かけ離れた夢のような暮らしのあり方。
ギャッベを手に入れることで、
そんな夢のような日々を、少しでも手繰り寄せたかったのかもしれません。
やがて18回ローンを払い終わる前に、娘を身ごもりました。
この古びた門前の家に、ギャッベはとてもしっくりと馴染んでいます。
そして、その上では、娘が毎日おもちゃを広げて遊び、
酔っ払った夫が眠りこけていることもあります。
(妻記)