「なぜ空き家を紹介し始めたのですか」という質問をよく受けます。空き家はそもそも古くて使えないものだから誰も相手にしないんじゃないか。どこにあるかもわからないし、そもそも探している人がいるのか。どこの不動産屋だって紹介していないのに何故ですかというものです。今となっては毎日当たり前のように空き家を紹介しているので改めて聞かれると何故と言われても即答に困りますが、始めるまでにはいろいろな事を考えてきました。そこで出た結論としてこれを仕事として取組むことに決めました。当時、新聞などで全国に空き家が増えている事が取り上げられていました。若い人は都会や郊外に移り住み、後とりがいなく家が余ってきている。商店街で商売をしていたけど今は大型店舗やネット販売になって店を閉めている。立地もよくまだ住めるはずのこうした建物が空き家として増えているのです。空いているのであれば売却したり解体すればいいと思いますがそうでもないようです。お金をかけてまで直して貸すのは大変だ。ご近所の目もあるし、建物に思い出や愛着もあるので誰でもいいわけではない。こうしてまだ価値のあるものが使われることなく空いていくのです。その一方で、若い人達の住宅事情は相変わらず満足はしてきていません。郊外にやっとローンを組んで新築を建てるものの、返済に追われ子供には相続できない。設備も新しく見た目はきれいだが、10数年もすれば流行遅れになり手入れもできない。ご近所づきあいがなくお店もなくて孤立する。そうしたニーズを反映してか、中古住宅や賃貸住宅を自分なりにうまく手入れして住む動きが始まってきました。マンションをスケルトンにして新築同様に造り変えたり、店舗だった建物を住居にしてみたり。リノベーションとよばれるこうした事例が若い世代を中心に増え、雑誌などで取り上げられてきました。片や空き家がストックとして増加してきていてそのままになっている。片や新しく住まいを所有することにかつての価値がなくなってきている。むしろ積極的に空き家を活用しより安く自由に住まいが手に入れば楽しいのではないか。こうした状況のなかから、空き家を探しだしてきて紹介してみようと思ったわけです。