長野・門前暮らしのすすめ

門前暮らし日記

011 130年前の演劇(2)

 今回も130年前の『善光寺繁昌記』から「演劇」の項の
続きを紹介します。
 ・ ・ ・ ・ ・
 このごろ善光寺境内に新劇場がオープンした。建物は巨大で、
舞台・桟敷・欄干などは東京の猿若座をまねている。
(中略)
 浜路(注:名優)が昨年善光寺にやってきて公演し、
大評判になった。今年の3月からは「善光(よしみつ)一代記」
という新作を上演した。善光寺のお膝元というこの地だからこそ、
こうした演目を上演できるのである。その斬新な趣向がたいそう
評判になり、口コミで広まった。田舎の人は早く炊事を済ませて
出かけ、町の女の子は夜になると化粧をして急いで駆けつける。
大挙して続々と押しかけるので、両側の桟敷の手すりはたわんで
折れてしまいそうだ。舞台前の桟敷は、人の頭が鱗のように
ひしめきあう。これによってもまた、その繁昌ぶりを見ることが
できる。
(中略)
 観客は涙を流す。太鼓がトントンと鳴り、幕が下りる。

 ・ ・ ・ ・ ・
 善光寺を開いたと伝えられている、本田善光(よしみつ)
親子の物語です。
 善光寺をモチーフにした劇を地元の人たちが楽しんで
いたのです。(小林)
mukashi011.jpg
文明開化が感じられる約130年前の長野の人々(『善光寺繁昌記』挿絵より)