野菜ソムリエのつくる精進料理とアメリカ帰りのお坊さん
A contemporary Shojin -Ryori ; Buddhist cuisine.
精進料理が楽しい。先日、 善光寺宿坊 吉祥院さんでいただいた昼食の美しかったこと。
丁寧に飾り切りされた蕪の煮物、ころころと愛らしいカボチャの福俵に、色鮮やかな
野菜の玉手箱。ひょうたん型にぬかれた生姜ごはんの、じんわりとした味わい深さ。
元々の精進料理に、野菜ソムリエの知識も合わせてアレンジされた、吉祥院オリジナル。
Buddhist cuisine called 'Shojin -Ryori' has become creative these days. For example,
kichijo-in temples serves meals which looks absolutely beautiful, and it taste friendly to us
who are not well trained as a Buddhist monk.
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善光寺にある39の宿坊では、それぞれに住職さんがいて、御堂があって、中には宿泊が
できたり、食事を楽しめるお寺や、ワークショップやイベントなどをひらいているお寺も
あったりするようです。そんな数多くある宿坊のひとつ吉祥院さん。お料理がユニークで
美味しいと、地元の方が勧めてくださったお寺です。若くておもしろいお坊さんのいる
お寺でもあります。
吉祥院さんの出会いは「お坊さんカフェ」。ナノグラフィカでこれまでに何度も開催されて
いるイベントらしく、その名のとおり、お坊さんを囲んで一緒にお茶を飲みながらお喋り
する会。わたしが始めて参加したお坊さんカフェにみえていたのは吉祥院副住職の和田隆嗣
さん。 27歳。若いです。昼は善光寺につとめていて、夜はクラブでDJをしたり。実は
アメリカのお寺から帰ってきた国際派お坊さんで、お話がとても面白かったです。
アメリカでの仏教、お寺のこと、お経は英語に翻訳されて読まれているのだそう...。
昨日(1月10日)は「仏のかたち・祈りのかたち」というトークイベントに参加してき
ました。画家であり善光寺白蓮坊住職である若麻績敏隆さんと、彫刻家である東光山正楽寺
住職の吉水快聞さんの対談。吉水さんの彫刻がとてもいいのです。「仏のかたち展」には
いくつか吉水さんの彫刻が展示されているのですが、なかでもわたしが好きなのは、小さな
生き物シリーズ。たけのこを這うなめくじ、ざぶとんに鎮座するちいさな蛙。木彫のやもりが
ガラス板の向こう側にペタッとはりついた「守宮」には、すっかり心奪われてしまいました。
ぽてっとしたおなか、手足、可愛らしい姿かたちのやもりに、なにか神々しいものを感じて
しまう不思議。
善光寺のそばに暮らしていながらも、仏教のことも、精進料理の本質のことも、よく知らない
わたしですが、自然の美しさにはっとするきもち、は持ち合わせています。朝日や夕陽、
山並み、ちょろちょろ動くやもり、舞い散るカツラの葉のむこうに見える旭山。渓谷。
仏師吉水さんの彫刻からは、そういった自然の美しさ、畏敬の念を抱かずにはいられない
かたち、への眼差しや想い、感動した時の心の震えのようなもの、が彫りこまれているように
感じるのです。
美味しい精進料理をいただいたり、お坊さんとのお話を楽しんだり、仏画や仏像を眺め、
生け花やお庭を堪能する。そんな時間を過ごすと、すっときもちが楽になります。わたしは、
敬虔な仏教徒というわけではないのですが、シンプルに、美しい、おいしい、楽しい、そんな
時間をすごす場所のひとつとして、宿坊を訪ねるのもわるくないかなぁと思います。
最近では20代30代の女性がひとりで宿坊に泊まりにきたりもするのだとか。そのきもち、
なんとなく分かります。
美しい、とか、おいしい、とか、感動する、とか
知的好奇心を満たされる、とか。
そんな毎日をすごしていきたいなぁと思うわたしにとって、長野市での暮らしは刺激に
満ちています。今も、この日記を書いているわたしの目の前には裾花渓谷の清流と岸壁、
雪の景色が広がっています。あぁ、綺麗だなぁと、ひとりで、とても満足した時間を
過ごしています。
お坊さんカフェの様子
http://www.neonhall.com/nanographica/blog/2014/11/1113_1.php
門前暮らしのすすめ
真子のスケッチ・ジャーナル 03
冬のマンゴープリン/ A tropical mango pudding in winter.
南国の空気と、マンゴープリンの香り漂う 雪国。そんなはじまり。
Somehow, my life in Nagano - prefecture of winter - started with tropical atmosphere and
smell of mango pudding. 'Asian Night Market' is a shop and bar where you find interesting
products from several countries, and you enjoy Thai style cuisine and drinks. It is based on
my friendship story ... ( Have a look under Japanese text below. There is a journal written
in English. Enjoy!)
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多国籍雑貨屋さん兼バー、本格的なタイ料理も楽しめるお店「アジアンナイトマーケット」。
マンゴープリンの美味しさや、添えられた赤紫の蘭の花とマンゴーの温かい黄色の色合いが
美しいのだとか、伝えたいことは山ほどあるのだけれど...。長野県長野市での生活をはじめた
最初の場所として、の話を、すこしだけ、かき留めておきたい。
昔からの信頼している友人(ここではあだ名をAzとしておく)とのたわいない会話の断片が
キッカケだった。
数年前、わたしがまだタスマニアに住んでいたときから何度か、アジアンナイトマーケットの
店主サンボさんの話を、友人Azから聞いていた。会ったほうがいいと友人gいうのだから、
いつか会わなくちゃなぁと、なんとなく記憶の片隅にとどめておいた。
2013年あいちトリエンナーレの仕事をしながら、わたしは次に暮らす場所と、次に関わる
べきプロジェクトを探していた。自然がゆたかな場所、名古屋からも東京からも遠すぎない
こと、できれば山が近くにあること...候補地はたくさんあった。ちょうどそんなタイミングで、
アジアンナイトマーケットが求人を出した。友人との会話を思いだしながら電話をかけ、
すぐに長野市を訪ねることになった。アジアンナイトマーケットを訪れた日、少しだけ
会話をした。「仕事としては、違うんじゃないの」という結論に早々にたどり着き、お互い
あっさりと納得してしまったのだった。サンボさんはサッカーの試合観戦に夢中になっていて、
私もリラックスしてスケッチを一枚描きあげた。その日の夜からサンボさんは雪山にこもる
のだと言っていた。プロスキーヤー&カメラマンという仕事もしているのだそうだ。
「せっかく長野に来たんだから、長野観光楽しんでいったらいいよ。店の2階に布団あるから」
と言って、会ったばかりのわたしに鍵を渡してくれた。「Azのことを信頼しているから、
Azの友達のことも信頼している」と言い残して、そのまま本当にスキー板を担いで出かけて行った。
なんてシンプルで、なんて自由なんだ。一人残されたお店で、タスマニアの自由気ままな
友人たちのことを思い出し、そんな彼らとの暮らしや、自由だった自分のことを思い出
していた。日本の生活は窮屈で苦しいって思いつづけていたけど、そうでもないのかも
なぁ。結局、店主の居ない店に三日間滞在した。その間に長野市で気になっていた場所を
訪ねて、仕事になりそうな縁もみつけた。長野を発たなければならない数十分前になって、
サンボさんは雪山から店に戻ってきた。短い会話だけした。「長野市で仕事が見つかった
かもしれないです。」「それは良かった。」
It's so simple. たったそれだけの話。店主不在の三日間に信頼感は増し、アジアンナイト
マーケットはすっかり居心地のいい場所になっていた。(わたしは友人を信頼していたし、
友人を信頼できる人のことも信頼していた。)だから、このまちに慣れるまでの最初の
生活の場所としてアジアンナイトマーケットを選んだのは「reasonable(リーズナブル。
妥当、理由がある。うーーん、いい言葉が見当たらない)」だと思っている。
(親戚や友達もいないまちで、初めての雪国暮らしで新しいプロジェクトに取り組み
はじめるし、誰を信頼していいか分からない中で不安だらけだったのだ。)とにかく、
そういうわけで、雪国にある南国バーの2階で寝泊りし、1階に集う常連さんたちの顔を
知っていくことから、わたしの長野生活ははじまった。マンゴープリンの香りとともに。
(本当に、とても、美味しいの。)
*アジアンナイトマーケットは2015年1月6日に閉店。すこしセンチメンタルになって、
思い出話を書いたことゆるして下さいね。
Somehow, my life in Nagano - prefecture of winter - started with tropical atmosphere and smell of mango pudding. 'Asian Night Market' is a shop and bar where you find interesting products from several countries, and you enjoy Thai style cuisine and drinks.
It is based on my friendship story.
My old friend called Az recommended me to see Sambo-san who own the shop in Nagano city. It's strong enough reason to visit Nagano city. When we met first time at 'Asian Night Market', he was busy watching a football game, and that made me relaxed and I enjoyed sketching as usual. We had short conversation. Sambo-san said that 'I do trust Az, so I trust you as his friend.' He passed me a key of the shop, and he went to mountain for skiing and photo shooting for few days, as he's a professional skier and photographer as well as shop owner. Isn't it cool? How free he is. His attitude reminded my best friends in Tasmania, and myself who used to live there. I was laughed out loud. I understand the reason why my friend made me to see him. Anyway, during my 3 days stay at 'Asian Night Market' in Nagano city, I found a job opportunity - a hint of new job - in Nagano city. Again, we had short conversation few muinuits before I needed to leave - I had an another job meeting in different city-. 'I may found a work. I might be back to this city.' 'That's good. See you, then.'
It's so simple.
I trust my old friend, and people who trust friendship. I thought it's reasonable to live at 'Asian Night Market' until I get used to new life in new city. Therefore, my life in Nagano - prefecture of winter - started with a smell of mango pudding.
真子
門前暮らしのすすめ
真子のスケッチ・ジャーナル 02
ねぇさんの葡萄ケーキ/ A Grape cake.
ぶどうの樹の下でおやつ。ナガノパープル(葡萄の品種)と、ナガノパープルをつかったケーキ、それから珈琲。9月、長野県坂城町にあるキタムラヴィンヤードにて。
A grape called 'Nagano purple' and a grape cake were treat for hard workers. It's a yummy memory at Kitamura Vineyard, in Sakaki town, Nagano prefecture, in September 2014.
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雪の降るまちで暮らしたことがなかったわたしにとって、長野の寒さは今まで
体感したことのないものでした。2013年12月、どんどん寒くなっていくばかりの
時期からはじめた長野生活です。寒さとどう付き合っていったらいいんだろう、と
不安になっていたそんな時、「電気毛布」をかしてくれた人がいました。
「ねぇさん」です。
ねぇさんと出会った場所はアジアン・ナイト・マーケット(以下アジアン)。
中央通沿いにあるタイ料理が食べられるバーと、雑貨のお店です。
わたしの長野暮らし、はじまりの場所。であり、しばらくお店の2階に暮らしていました。ねぇさんは元アジアンのスタッフ。わたしが出会った頃はちょうど農家に嫁いで行った
あとでしたが、お店によく来ていました。2階で暮らし始めたわたしに
「ここで寝ているの?寒いでしょーう。」と、声をかけてくれて、次にあったときには
使っていない電気毛布を貸してくれたのです。友達や親戚のいない土地で心細かった
時期でもありました。初めて電気毛布にくるまって眠ったあたたかい夜、
人のあたたかさを感じてなんだかちょっと涙ぐんだのを覚えています。
このあいだの秋(9月)に、ねぇさんの働く畑を訪ねました。
見晴らしのいい山の斜面にある葡萄畑。葡萄棚の下を吹き抜ける風に乗って、
たわわに実るナガノパープルの甘い香りが漂います。長野に来て初めて耳にした
「ナガノパープル」という名前、長野県で生まれた新品種らしいです。
市場に出回り始めてから間もないこともあり、他の葡萄に比べ希少で高級品なのだとか。
味見させてもらいました。あまぁい!皮ごと食べられる!皮も渋くなくて甘い!と大興奮。
収獲作業で忙しそうなねぇさんでしたが、おやつの時間には手作りのケーキが
出てきました。ナガノパープルをふんだんに使った葡萄ケーキ。パウンドケーキの
切り口に、葡萄の濃紺、紫が映えます。カップに注がれるのはあたたかい珈琲。
葡萄の樹の下での束の間のピクニックを楽しみながら、あぁいい時間だなぁ、と。
長野県っていい場所だよなぁってしみじみ思いました。
(門前まちから、ぐっとエリアを広げてのエピソードでした。)
キタムラ・ヴィンヤード https://www.facebook.com/Kitamuravineyard?fref=ts
アジアン・ナイト・マーケット http://asian-night-market.net/
真子
善光寺39宿坊のひとつ、薬王院さんでいただいた精進料理のお昼ごはん
This is a lunch served at 'Yakuo-in' , one of 39'Shukubou' which lodge worshippers,
around Zenkoji temple in Nagao prefecture, Japan.
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善光寺さんのお膝元、長野県長野市に暮らすようになってちょうど1年たちます。
長野市は「ちょと暮らしてみたいまち」のひとつでした。「ちょっと」というのは
「試しに」という意味。2013年12月からまずは2ヵ月暮らしてみたところ、
まだまだもっとこのまちを知りたいなと思い、長野市滞在が3ヶ月伸び、さらに3カ月伸び。
そうして1年。今では、これから先も、自分の拠点のひとつとして、
長野と長く付き合っていけたらいいなぁと思っています。
このタイミングで「門前暮らしのすすめ」のブログを書いてみないか、と
声をかけてもらったことを嬉しく思っています。さて、どんな人がこのブログを
読むのだろう?門前暮らし、に憧れ移り住みたいと検討している人が読者だとしたら、
わたしが長野に来たキッカケや、滞在を伸ばした理由などを説明してあげたら
参考になるのかも?意気込んで書き出してみたら、ずいぶん長く、ものすごく理屈っぽい
文章になってしまった(まだ書き終えてない!)ので、今回はお蔵入りさせることに
しました。こまかい話はおいおい、小出しにしていくとして...まずは、自己紹介に
代えて、さっそく絵をご覧下さい。
第一回目の絵は精進料理。先日(11月11日)薬王院さんでいただいた精進料理の
お昼ご飯です。漆の赤いお椀に盛られた数々の料理、どれもとても美味しかったです。
特にご住職みずから揚げてくださった、こだわりの人参かき揚げ!
熱した油の中で一度ざっと人参を広げてバラバラに火を通した後で、寄せて
固めるのだとか。だから、それぞれがパリッとした人参がふんわり空気を抱きながら
ひとつのかき揚げになっているんです。食感がとてもおもしろい。お寺の精進料理は
季節や人数や会食の目的などによって内容もがらりと変わるそうなので、
いつでも同じものが食べられるわけではありません。ですが、
この人参かきあげについては、ぜひまた機会があったらいただきたいもの。
美しいかき揚げ。ご馳走さまでした。もうお分かりかとおもいますが、わたし真子は、
美味しいものが大好きなのです。門前暮らしを語っていたら、どうしたって
門前のおいしいご飯についての話が多くなってしまう気がしています。
今後もどうぞ、真子のスケッチ・ジャーナルにお付き合い下さいね。
よろしくお願いします。
真子